はだかになりたい /服部 剛
 
抱えたふりのぼく 
「うまくなくてもいいじゃない」 
さらりと言うきみ 

2日前の誕生日に 
可愛い後輩にハート形の色紙をもらい 
先輩にギターで祝いの歌を弾き語られ 
お客様に日の降りそそぐ森のカードをもらい 
ほしいと言っていた香水をぼくにもらい 
周囲の誰もが微笑むような 
素敵なきみと我が身を比べ 
歩いてきた平凡な日々の道程は
振り返ると、しなびていた 

旅先の 
ホテルの個室で 
まっ赤な顔してパンツいっちょう 
はだけた浴衣のまま 
壁にもたれた 
電源を入れないテレビ画面に 
薄く映っているふぬけた自分を 
洗い流すかのように
歯ブラシをしている 

( 今夜僕は求めてやまない
( 愛のないせっくすよりも 
( 心ふれあうほうようを   

本当は今
このベッドの上に 
すべてを脱いだ 
素顔のきみがいてほしい 

はだかのきみが、いてほしい。 




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