はだかになりたい /服部 剛
 
旅先で出逢ったひとと 
うまい酒を飲んだ日は 
深夜にひとり戻ったホテル部屋で 
まっ赤な顔のまま 
はだかになりたい 

ベッドの上で 
パンツいっちょう 
はだけた浴衣 
へべれけに 
ましろい壁に背もたれて 
歯を磨きながら 
ついさっきタクシーに乗り 
家に帰ったきみの 
名残惜しげな横顔を 
かみしめる 

半年ぶりに再会したぼくら 
郷土料理を盛った皿の上に 
互いに伸ばす腕(かいな)の橋を架けて 
長い距離を越えて出逢えた夜に 
グラスを重ね 
(本当にうまい料理) 
について語り合う 

「うまい詩が書けなくて」 
頭を抱え
[次のページ]
戻る   Point(8)