膝枕/掘鮎涼子
愚かな人が一人
猫はその人に怯えた
怯えた猫は愚かな手に噛みついた
「何すんだ」って猫は殴られた
「噛まれるのは当たり前だろう」 僕は呟く
猫は噛みつくのをやめない
「もうやめてやれよ 殴られるだけだぞ」 僕は呟く
それでも猫は噛み続けた
猫はヒトを嫌いになったのだろうか
猫はボクも嫌いになったのだろうか
いつの間にか 猫はいなくなっていた
行き場の無くなった怒りの行き場は僕
その人は僕を殴る
でも僕は噛みつけなかった
本当は殺してやりたいくらい憎かったのに
「噛みつけばいい」僕は僕に呟いた
でも僕は噛みつけなかった
僕はヒトを嫌いになったのだろうか
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)