死の淵/蘆琴
光は走り
涙は空に向かつて、
指先が凍り
砕ける夢
其処には年寄りがゐる
あれはそもそも
粒ほどの機知を以て
えんどう豆を剥いて食ふ
俺は酒も煙草も呑まぬ
手酌は清し
明日へと駒を進めてゆけば、
戦ひは終わり
倒れた兵士を診てやる、 衛生兵は香りを嗅ぐ
死は風に乗って子の元へ
草は枯れたる荒野の如く
理想は精神をもてあそび
狂人の曰く、
己とは世界なり
さぁ見えるもの 聞こゆるは嘘
触りうる謎を求めることなく
ただただ己と世界のあひだに快楽よ在れ
能なる人よ、無為を嫌つて
このまま
迎えは迎えは迎えは迎えは
いつ来るのか
無へとかへらう
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