静止/ねなぎ
 
呼び出された
二階の事務室
「わかったかって
聞いとるんや」
唐突に切り出された話
「あんなあ
言うてなかったけどなあ
おまえらがダミーだと思ってたカメラ
映ってたんや」
座らされた後
目の前に置かれた
ビデオとテレビのブラウン管
「もちろん、画面には映さへんけどな
こうしてビデオには撮ってあるんや」
流れ出した映像
見慣れない六分割の画面
「つまり、カメラは六台
見てたというこっちゃ」
階下の店内からの
流行の曲が
幽かに漏れ聞こえる
「で、どうする」
張り詰めたような
震えるような
含まれた声
「これでも、ごちゃごちゃ言うんやったら
警察ツキ出すんやけどな」
僕はただじっと画面を見つめたまま
画面の中の自分と同じような
間抜けな顔で固まっている
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