都会の倦怠/由希
 
茹だるような暑さの中
仕事に向かう足も鈍る

まともに呼吸を出来ている気がしなくて
やたらと横隔膜を上げ下げする

いま
この空気の中に酸素が何パーセント含まれているのか、知りたい



剥げかけたビルの塗装が目に入り
余計にやる気を無くす

おいおい、隣に新しいのを建てる前に
古い方を先に直せよ



肌に張り付いたシャツ
襟元を掴んでうんざりしていると

目の前を猫が歩いているのに気付いた



俺と同じ方向に曲がるものだから
ぴったりと後を着いていくと

ちょっと振り返ってから、慌てたように走り出した

その足どりすら怠そうで
思わずニヤリとしてしまう



職場に着くと、観葉植物まで萎れていたので
一緒にミネラルウォーターを煽った



ああ、そうだ

今日は台風が来るのだ
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