あいかた/佐々宝砂
ごく素直に言葉を吐こうと努めながら私は人形化してゆく 人形化してゆく身体はメタリックかつ非人間的 かというとそんなことはなく シリコーン樹脂製の肌は白く滑らかに人の肌よりも美しく私は自分の美しさに怯え溜息をつこうとするが 人形であるところの私は息も言葉も吐くことができない 暖かい息も冷たい息も そういえば私の肌は冷たい 今は夏だから私と添い寝するときっと快適だろうが 冬が来たらどうなのか あなたは私を暖めてくれるか たいていの場合女の肌は男の肌より冷たい 私の肌は女の肌よりも冷たい 私は人形なので目を見開いたまま唇は微妙に半開きのまま両足だけは大きく広げわずかに残された私の人間的な部分は賢明にいや
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