組詩「風」 /青の詩人
 
1.風の運命


風はどこへでも行けた
神様がそう決めたから 
風は旅した
誰よりも自由だった

風は見た
いろんなものを
地平線のかなたの 鮮やかな光を
海をゆく 船の帆の白さを
空の端の ひどく老いた竜を
闇の中で 生まれいずる星を

風は見た
だが風を見た者は
誰ひとりこの世にいなかった
神様がそう決めたから
風は誰とも話せなかった
神様がそう決めたから

風は 風はついに 
誰にも気づかれなかった
気づかれない運命にさえ 
気づいてもらえなかった

風はどこへでも行けた
そして風はどこへも行けなかった
いっそ風はどこかへいってしまい
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