憧憬/由希
 
空に

広大な波を連ねる積雲は
傾きかけた陽光に染められて

まるで天使の翼のように

輝く造形となる



地に

肢を縫いとめられた私は
目を細めては高みを見上げて

遠すぎる美しさに

溜息をつく



蝋の翼で飛び立っても

イカロスは天に昇れなかった



辺りは朱に染まり

もうすぐ漆黒の時間がやってくる
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