氷点下15度の灼熱/ムラコシゴウ
無音なんて瞬間はない
なんていったのは4分33秒のジョン・ケージか
見上げる路線図に刻まれた黄の疵は
痺れ絶えた僕の海馬を流す距離の苦厄紋様だ
ほら
見てみろよ
さっき自分から見せてしまった辛苦の
そして深紅のマグマの底面に
慙愧が薄く延べられているよ
見ちゃいられないよね
赤いコトダマにすっかりやられちまって
血すら脱水気味の僕のアクアミネラリだ
君は気づいているの
非常事態宣言下で
狂う飽食のララバイを口ずさみ
氷点下15℃の灼熱を
待つ
僕に
渇く指先
水銀の翳を浸す
無音なんて瞬間はない
なんていったのは8時7分の馬頭観音か
でも今僕の見上げる路線図のあたりは
すべてが遠のくぐらいの無音だったってことは
真実だ
って
君に言ったら信じてくれるだろうか
戻る 編 削 Point(6)