蝉時雨/由希
 
呼吸すら億劫になるほどの草熱れ

立ち込めるのは夏の匂い


ジーク… ジーク…


緑陰に身を屈め、獲物を狙う少年

まるで、その空間だけが別世界


ジーク… ジーク…


季節に取り残されたような錯覚を覚えた瞬間

白い蝶がフワリと舞い上がる


ジーク… ジーク…


嗚呼、ここは紛れも無く幻想の空間




夏の、匂い

夏の、音
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