信念の塔/悠詩
天に至る塔を積み上げた
賢者は十日間眠りこけたあと
パンのかけらを手に
天に発った
季節が一巡りする頃
賢者は大地に舞い戻った
手には
精霊の優しさと
厳しさと
強靭さと
弱さとを
象嵌した
斧を携えていた
全てを断つ信念の斧
全てを絶つ信念の斧
羽根をまき散らしてカケスがわめく
本当に宝は埋まっていたんだ
みんなは賢者の信念を称え
天に至る塔に
信念の塔と名付けた
「お兄さん 嬉しくないの?」
「まだ足りないのだ
わたしは出発点に立ったに過ぎないのだ」
賢者は信念の塔の入り口を閉ざし
突然井戸の下の樹海にこもり
季節が一巡りする頃
信念の斧を手に
姿を現した
賢者は
その瞳に
今までになき光と
今までになき信念をいだき
天に至る塔に
ためらいなく
信念の斧を
振りかざした
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