追憶/由希
古ぼけた木のテーブル
二つきりの椅子に、コツコツと時を刻む柱時計
君と過ごした場所は
優しく霞む、想い出の中に
君は寝台で本を読み
寒がりの僕は暖炉の前で蹲り
当たり前のように過ぎていった
静かな時間
何も言わずに君が居なくなった朝
僕は少し泣いて
それから死んだように眠った
いつの間にか、季節は巡り
もう三度目の夏
僕から君に伝えたい言葉があるとしたら
…ありがとう。
ただ、それだけ
きっと、君は今も
その綺麗な緑色の眸で
世界を見つめているのだろうから…
戻る 編 削 Point(1)