追憶/由希
 
古ぼけた木のテーブル

二つきりの椅子に、コツコツと時を刻む柱時計


君と過ごした場所は

優しく霞む、想い出の中に



君は寝台で本を読み

寒がりの僕は暖炉の前で蹲り


当たり前のように過ぎていった

静かな時間



何も言わずに君が居なくなった朝

僕は少し泣いて


それから死んだように眠った




いつの間にか、季節は巡り

もう三度目の夏



僕から君に伝えたい言葉があるとしたら


…ありがとう。


ただ、それだけ




きっと、君は今も


その綺麗な緑色の眸で

世界を見つめているのだろうから…
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