車椅子の背中/悠詩
 
斜光のまどろむ講義室
ノートを広げて座る僕と
入口には車椅子の男の子

授業までの待ち時間を持て余し
ふたりは
ノートの隅に書かれた
シュレーディンガー方程式の
井戸の中で
はにかみを分かち合っている

可動の机たちがとおせんぼ
大きな車椅子は収まらない
男の子は机を抱え上げ
スペースを作り出した

はにかみは分断され
僕の中に戸惑いが蟠る
凍結する時間と
稼動する時間と
越えられないポテンシャルの壁を
定義してしまう



「こんなひとたちでも頑張っている」
そう口にした時点で
もう偽善がほつれ始めている

個性を尊重し自分で解決する姿が
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