青いテント/長谷伸太
 
ない
 私は走って時計の針をむしり取り、沙世ちゃんへ向って投げつけました。そして針でテントを引き裂きました。そこから水に浸したように色が濃くなっていき、たちまち辺り一面、紺色に包まれました。ぱちぱちまばたきをしているうちに、空に白いつぶつぶが見えてきて、泡立ったように見えました。真ん丸い月が浮かんでいて、見事なクリームソーダでした。
 すっかり日の暮れたお寺に、私は一人で突っ立っていました。薄桃色の花は私の足の下で、めちゃくそな姿になっていました。砂利を一掴みとって、花を埋めました。もう帰らなきゃ、と走り出しましたが戻って、もう一度砂利の上からしっかりと花を踏み潰しました。本堂の方へ向って手を
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