あるいは、あめからの呼びごえ/月見里司
 
ロップが、
/かつん、と音を立てて植木鉢に当たり、砕けた。赤い欠けらに蟻が群がる。ドロップは、土へは還らない。
/くすくす、かつん。かすかな笑い声が聞え、また、飴を投げる音が聞える。
/くすくす、かつん。単調なリズムで、飴が降る。水を撒く。濡れる、赤い欠けら。
/かつん、
/かつん、かつん。段々と低くなってゆく空に、飴を投げる音が反響する。箒とちりとりを取りに部屋に戻ると、缶の中に二つだけ残った、薄荷味のドロップが、こちらを見ている。かすかに、笑う。
/くすくす。


//2006年11月28日 poenique「詩会」提出 非改稿
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