あるいは、あめからの呼びごえ/月見里司
/水膜現象
ざざあ、と音を立てて降る雨の中を走っていた。暗い。フロントガラスにぶつかり続ける雨は視界を著しく遮り、ライトの届くその先を見通すことはできない。ワイパーがぞんざいに動き、僅かな間だけ風景を映し出す。後続車も、対向車もなく、アスファルトが水面になっていて、車線は消えている。無数に形作られる同心円を眺めながら、無為に時間は過ぎ、スピードを落とすこともなく、走る。ざざあ、という雨音が車内にも入り込んでいて、テールランプも捉えず、あらゆる雨に塗れながら、それでも、アクセルを踏み込んでいる限り、進んでゆく。
/夜すがら
影がない。霧雨だった。大樹の下に立つ夢を見る。光沢
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