沈黙/松本 涼
 
電話が鳴る
漆黒の闇の中から

それは誰でもない
誰かからの沈黙の暗号

受話器の向う側へ
言葉の無い声を弄る
焦げ臭い私の指先

電話が鳴る
跪いた気怠さの上に

凶器に育った沈黙が
存在の落下を促す

発信元は
闇の中で形を求める私の影

何処で逸れたのだろう

昨夜目が合った
あの黒い犬の瞳の
その中には

確かにまだ
居たのだけれど


電話が鳴る
電話が鳴っている






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