ヘルメスとヘルマ/hon
 
する。神がこの杖を揮って追い立てると、霊魂の群はちち、ちちと異様な啼き声をあげつつ、神に随ってゆく。それはあたかも、不気味な洞窟の奥深く、連なりあって岩壁に懸かる蝙蝠の列の一羽が岩から落ちると、群はたちまちちちと啼きつつ飛び交うさまにも似て、霊魂の群はちち、ちちと啼きつつ神に随い、助けの神ヘルメイアスはその先頭に立って、陰湿の道を導いて行った。オケアノスの流れを過ぎてレウカスの岩も過ぎ、陽の神の門を過ぎ、夢の住む国も過ぎると程もなく、世を去った者たちの影――すなわち霊魂の住む、彼岸の花(アスポデロス)の咲く野辺に着いた。(ホメロス「オデュッセイア」 xxiv.1-14)


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