ヘルメスとヘルマ/hon
 
 遠い古い時代のこと。一人の旅の商人がいずこかを指して道を歩いていた。
 やがて村落の境にさしかかると、石を積んで作られた小さな塚(ケルン)が道端に祀られてあった。
 それは旅人を案内する目印であり、危険な旅の無事と安全をつかさどる神そのものであった。
 彼は石をひとつ拾うと、他の旅人がそうするように石の山の上に置いた。
 それからなにごとか祈りを捧げると、再び彼自身の道を進むべくその場を去った。

 道端に積まれた目印の石の山はヘルマと呼ばれ、ヘルメス神を表した。ヘルマは男根の像である。古代ギリシャではヘルメスは境界の神だった。

 元来、ヘルメスは動物を守る神だった。その像は肥
[次のページ]
戻る   Point(1)