モデルの影/木屋 亞万
 
になるの
太陽が作る影の穴がいつも怖かったんだから
モデルはしゃがみ込んでしまった

生まれたときからずっと
影はすぐ傍にいて
立ち上がったときから
ずっと足と繋がっていた

「ちょっとジャンプしてみて」閃きが頭をよぎる
モデルはヒールを少し浮かすくらい飛んだ
意味がわからないと目で訴えてくる
「影を見ながら」
また飛ぶ カシュッカン
もっと高く飛ぶ 
ふうわりふうわり ゆるい服が揺れて

モデルはまた照明に向かって歩き出した
一歩踏み出す度 影は足から離れて
足が宙に浮く度 引っ張る手は引っ込んでいく
歩くことは 生きること

影はずっと傍にいたけれど
ずっと繋がってはいなかった
影はただ支えようとしただけ
手に力が入りすぎていただけ

これからモデルは飛躍的な成長を見せるかもしれない

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