カッターナイフ/麻生ゆり
 
さあその刃をちきちきと出して
鋭い切っ先を眺めてみよう
目に見えない何かが
今にも放射されそうではないか
その秘められた機能美に
ぞくりとする
ああ
そのカッターナイフが私の名を呼ぶ
だから
そのとがった切っ先を
ひたと手首にあてて
ひいてみよう
繊維を断ち切られた皮膚から
薄く血がにじむ
その行為が楽しくて
切る また切る
やがて腕が赤く染まるころ
陽が昇る
朝焼けの陽光の中で
ナイフは発光し
全ては赤くなる
私の瞳さえも真っ赤に変わり
狼のようになる
カッターナイフはさしずめ
その牙なのだ
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