考察/Tsu-Yo
さまの顔を忘れ続けている
(ところで、その娘の名前が思い出せない)
会社の七不思議はすべて
産業スパイに盗まれてしまったので
この会社は今日も
どこか遠い南の島に似ているような気がする
定時になり
受付の女の子がタイムカードを押す
36度2分の安心と絶望
〈駐車場にて〉
霊安室には
色とりどりの車が安置されている
存在とは形ではなく
温度で定義されるものらしい
すでに
どんな夏の思い出も
語ることのない麦わら帽子の穴に
誰かがキーを差し込む
ギアをバックに入れたまま
一人またひとりと
この場所から去っていく
住むべき世界はいつだって
世界のすぐ隣
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