「 とまどうペンギンどもよ今すぐ羽ばたきあたしに続け!。 」/PULL.
 
背中が、
「締め切りは?。」
と訊いた。
「三日破った。」
「そう…頑張ったのね。」
「そうよ頑張ったの。」

サメザイはあたしに、
「頑張った。」
を言う時、
ひどく満足そうな顔をする。
だから、
サメザイは知らない。
あたしは一度も締め切りを破ったことはない。

サメザイの手が、
殻と卵白を捨てる。
その指は卵白に汚れていて、
ぬめぬめと光っている。
サメザイはそれを蛍光灯に照らし、
しばらく眺めていた。

サメザイが振り向いた。
サメザイの口が、
言った。

「わたしは頑張ったわ、
 あなたとのこと。」

焦げ付いた卵黄の匂いが、
何故だかひどく目に沁みて、
サメザイの顔が、
見えなかった。












           了。


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