無人駅/悠詩
 
伝いだろう


届きそうなふたりの距離
届きたくないふたりの距離
同じ土に培われてきたのに
どこか恥ずかしくて悔しくて



「ここがわたしの故郷です」なんて
空々しい言葉が
行く先々で
谺(こだま)して





しわくちゃになった
乗車券引換券を見る
少し黄ばんだ紙に
名もなき駅の名は刻まれていた

迷子になっても
帰られる故郷は湖の底に
静かに眠っている



(しわくちゃの引換券)
(存在証明)





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