まつり/小原あき
ガラス窓が
ごつん、と鳴った
振り向いたら
何かがぶつかって
怪訝そうな顔をした
ガラス窓がいた
蝉が死んだのだ
わたしはそっと拾い上げて
犬にやった
窓の外には
気温を上げるほど
お前の仲間が
鳴いている
(泣いてくれているのですね)
ああ、そうさ
お前の一生が
見事に終わった
歓喜の祭りだ
蝉の泣き声が
夏へのわだかまりを
消してくれているようだ
(ありがとう)
そう言ったのは
蝉だったのか
わたしだったのか
犬は怪訝な顔をして
空を見上げている
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