トンネル/天国/書店/吉田ぐんじょう
 
ん人の話を聞かない

きれいでもなんでもだめなの
と言って
ちょっと後ろを振り向いた隙に
狐の子供は葉っぱだけ置いて
ちょろちょろっと逃げていってしまった

まったくしようのない狐である

仕方がないので
自分のおさいふからひでよを出して
レジスターの中に入れておいた

わな図鑑を買っていったあの狐は
わなにかからずに健やかに成長しているだろうか
そうだったらいいと思う
そうじゃないといやだと思う

狐の子供が出した葉っぱは
現在わたしが持っているが
晴れた日に頭の上に載せて遊ぶと
時々違うものに変身できるので楽しい

書店は今日も人や人でないものを相手にして
順調に営業を続けている


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