雑草以下/松本 卓也
 
ブロック塀の微かな綻びから
雑草が太陽を求めて背伸びする
大地とはかけ離れ場所に根を伸ばし
少しでも高く登れるように
もっと光を浴びれるように

梅雨も明けた七月の末
夜の内に蓄えられた湿気が
熱を空に這い上げていく

背伸びをしたくても
咽かえる熱気と排気ガスが邪魔で
結局はやめてしまうだけ

何時ごろからだろう
将来百姓になって暮らしたいと
本気で呟くようになったのは

もしかしたら
閉鎖した世界の中で描いた
妄想に浸っている方が
ずっと幸せなのかもしれない

目指すべき場所は何も無く
太陽の輪郭を確かめようと
空に目を凝らした幼少の頃の方が
まだ何かを掴めたかもしれない

大地に根を下ろすことも
空に手を伸ばすことも
光を浴びることでさえも

言い訳を幾つも積み重ねながら
何もかもが億劫だと嘯いてみせる
掴みたいと思うほどの眩さ
どこかに転がってないだろうか
戻る   Point(1)