風は風なのに/松本 卓也
ただ歩いているだけで
汗が全身を濡らしていく
停滞が見上げる空を覆う
何処に行きたかったのか
忘れてしまえるほどに
鳴く声と泣く声が
空間と心境の狭間で
奏でている歌が聞きたい
遠ざかる太陽に
一通りの悪態を並べ
額を拭ってみたとして
零れるのはいつも愚痴で
商店街に立てられたのぼりは
確かにはためているのだから
風は吹いているはずなのに
それは風じゃないって
心地よさが感じられないから
生きることが嫌になりそうだから
風は爽やかでなきゃいけないなんて
いつから決め付けてしまったのかな
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