鳳仙花/
蒸発王
んだ私と
鳳仙花
毎晩毎晩
彼の記憶に侵食されて
頭の中は埋められた
たった右目の一つに
体の全てが
犯され
喰らわれてしまった
私の
名前は
何というのだろう
せめてと思って
彼の名前は確認しにいく
今夜も
彼の墓標の前に立つ
刻まれた名前を見るにつけ
私の左目が涙を流す
ああ
今なら判る
手には
献花の鳳仙花
本当は
右目に映る
歪んだ私と
あの時
鳳仙花
彼の瞳の向こうで
少し
幸せ
私は笑っていたのだ
揺れる 鳳仙花
『鳳仙花』
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