物語を語る前に/狩心
 
れて
一人眠る俺を誰かが見守っていた
夢の中で
夢を見る前に私は自分が眠っている事を確認した
皆が寝静まった深夜のこと
家に入れずに何度もドアを叩いた
私はドアの鍵を無くした
駅から家までの長い道程を歩いて帰ったのだ
霧の深い夜だった
私は自転車の鍵を忘れた事に気付いた
会社のデスクの引き出しに
雨が降っていた
仕事中
明日迎えるたった一人の誕生日を予言していた
お前には自由意志が残されているのか
パソコンの画面で動くキャラクタが可哀相だと思った
私に作られたお前よ
ゲーム会社の門は重く深く
銀色に輝いていた
不可能な私は家を出た
昨日は何をしていたのか思い出せない
空白の日々が続いていた
お前が私と別れたあの日から
愛について考えている

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