くらげが触れてしまった鮮やかな未来/土田
 

きみを許す

合成された子供たちは
廃墟で鬼のいないかくれんぼうをする
防火サイレンががなると同時に
暗室と化した廃墟で子供たちの声だけが記憶され
それは十年後の未来の日に現像される

いーち、にーい、さーん、みーつけた
きみを許す

存在の確認を認めてくれる記念日
許しを請うとラの音符だけでつくられた背景音楽が
手垢のへばりついたニュースキャスターの声に溶け込んでゆく

どうやら大量発生した海月を
駆除する運動が各地で起きているらしい

遠くをずっと見渡していた
足を踏みしめるたびトタン屋根が呼び続け手招きをする
今にも折れそうなアンテナに手を掛け
ずっと先の河川敷を見ていた
海月たちが東京から逃げ出そうとしていた

いつかここへ戻ってくるのだろうか
着地する水底を見つけられないまま
誰かが触れしびれてしまうまで
何も言えないことを言うために

ずっとここにいていいよ

打ちっぱなしのコンクリートの箱のなか
とても楽しそうに笑いながら
子供たちがダンボール箱を蹴り続けていた
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