牛の魔法使い/楠木理沙
 
いた
牛だって魔法を使えるのに
なんだか 少しだけ悔しさがこみ上げてきた

いつからか着なくなったTシャツを 押入れの奥深くから引っ張り出した
袖を通してみると 想像よりも小さく思えた
今ならレイアップシュートを上手に決めることができるだろうか
わたしは胸の真ん中が 角でちくりと刺されたような痛みを覚えた



あら 寝巻きにちょうどいいんじゃないの
いつの間にか部屋に入ってきた母が 鏡越しにわたしの姿を覗き込んでいた

これはだめなのっ わたしは我に返って大きな声で答えると 
母の前でレイアップシュートの真似をして見せた

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