置き去りカンバス/悠詩
 




雫を吸い込んだ一握の粒が
遥か彼方に聳えるトネリコの葉を揺らす
馥郁たる香りが
カンバスを包む

拭い忘れた指が
男の子と
女の子の
手に呼応する


ぐずぐずの三脚で踏ん張り
また見にきてくれることを信じて
ずっとずっと
誰かを待っていたんだ




わたしの住んでいたこの世界を
わたしは捨ててしまったのに


消そうとしていたと



いうのに






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