置き去りカンバス/悠詩
になじみ
舐めると鈍色の天が刹那に微笑んだ
こんなに神々しい絵なのに
三脚はぐずぐずで
つつけばすぐに崩れてしまいそう
わたしは指でそれを押してみたが
脚は絵の具を吸い込んで
更に強く大地に根を張った
カンバスの木も
鳥も
女の子も
男の子も
ここにはいない
時は流れ
世界が姿を変えてしまったらしい
カンバスの足もとから
足跡が伸びている
誰もいない世界にスニーカーがスキップ
どうしてほどけた紐の跡までついてるんだろ
足跡を辿る
足跡はスキップをやめ
小走りになり
速歩きになり
それも疲れて
やけになって
後ろ向きになったり
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