千のベーゼ/ムラコシゴウ
銀の鱗たちの抱擁に
十重二十重に被覆されたまま
世界の深奥に 沈むもの
嵐 過ぎて後
マンホールの隙間より聞こえる
ゆるやかに 鼓動するもの
いつか伊太利亜の
キネマの最後に邂逅した
漆黒の水面を ゆさぶるもの
濡れたアスファルトの上を
のたうつ1mの奇異な原始的生命の
下層にみなぎり 突き上げるもの
教授は僕に赤ペンで
A
の
文
字
を
刻
印
したらしいがおかげさまでたまには常套句としてのセツナサに溺れ死んでみても
僕はかまわない
と思える よ うになった
今
迸る
ホトバシル
千の
千の懸想
あの日 向こう側に見た
無数のあいのかたち
を
全ての逍遥する都市の
上空へ
上空へと
そして
君へと
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