擬人化/あおば
 
攻撃用メモリーをセットして開始のゴングを待つ間に汗が首筋から噴き出てくるのを意識する。手でセンサーの位置を少しずらして、改めて合図を待つ間に戦意が遠のくのを覚え、敵陣の相手の顔をもう一度睨み付けて、憎悪をむき出しにした相手から戦いのエネルギーを少しだけもらう。戦え戦え、負けるな自分、負ける振りして斬りつけろ!
敵の憎悪を懐に思いきりぶち込んで勝利をもぎ取るのだ、と必勝の作戦を立てた。ゴングで立ち上がった途端に台詞が飛んで無音の間に聴衆の失笑が天井から反射してきて二重になって聞こえる。これでは勝てないとすぐに作戦を変更。朗読時間を忘れたような悠々とした素振りで相手の戦意を逸らす、が、しかし、攻撃用
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