「 悲しみはない。 」/
PULL.
また見知らぬ誰かのために、
泣いた。
依頼主に、
何があったのかは、
知らない。
遺影と目を合わせても、
何も感じない。
泣き屋が流す涙に、
変わりがあってはならない。
それがどんなに、
悲しい死であろうともだ。
涙は、
この胸の蛇口を開けば、
いくらでも出る。
あたしは、
あたしたち泣き屋は、
そう定められ、
出来ている。
了。
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