樹/チグトセ
 


でも
この声はきっと届くでしょう
たとえどこかで
迷子になってしまっていたとしても
ここは変わらぬ一本の樹の上なんだから



「ほら」と言って指をさした
彼の指さした先に目をやると
まるで星みたいだった
枝を進んでいくときには疑いなく一本道だったものは
なるほどこうして反対側から振り返って眺めてみると
たしかに無限通りある枝のうちの一本にすぎなくて
それはまるで宇宙の星のようだった
「じゃあ」と言って
彼はそこで枝わかれていった


ねえ あの眩しい茂りの先の
太陽の光なんて要らないから
君の枝が今どこにあるのかを知りたいのです
君が元気でやっ
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