聾唖のあなた/円谷一
 
 はっ と息を飲んで あなたには空襲警報が聞こえなかったのだということを思い出した 全力で外に出ると 空からは大量の爆弾が投下してきて爆風に飛ばされ右肩の骨を折った 激痛を堪えながら自宅へ戻ろうとすると 視界に映ったのは火の海に浸された街だった
道端で倒れている老人を安全な場所へ移して炎をくぐり抜けて自宅に戻ると 自宅は轟炎に包まれていて中から言葉にならない声が聞こえてきた 扉を開け あなたの名前を呼んだ 居間の方から叫び声が上がったので行ってみると 煙が充満していて炎に迫られているあなたを見つけ 炎に飛び込んであなたを助けた
消防車と救急車が来て二人は救急病院に入ってベッドで安静にしていた あなたと煙上がる街並みの上空の赤星を見つけて無事だったことを神様に感謝して笑い合った
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