メイドロイドに惜しまれ/虹村 凌
 
寒いから一緒に寝ようと言われて
抱きしめりゃ大して暖かくないと言われ
洗い立ての髪にキスをすりゃあ怒られて
抱きしめた手は小さな胸の上で
こんな詩を書けば

手にした吸殻はフィルターが千切れて
残った葉が中から飛び出していた
巨大な箱のような実家の自室にこもって吸殻を見つめる

いつかスーパーカブでメイドロイドを迎えに行きたい
でもきっと
僕がそこに着くころにはメイドロイド
既に他のご主人様と腰を振っているだろうね
ダスティンホフマンに憧れて手を引いて逃げれば
非常識だと手は振りきられ
スーパーカブは知らない誰かに盗まれて
メイドロイドはご主人様のもとへ

安っぽいドラマは嫌いじゃない
安っぽいヒロイズムも嫌いじゃない
磨り減ったラバーソールも嫌いじゃない

惜しまれながら死んでゆく英雄に憧れて
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