メイドロイドに惜しまれ/虹村 凌
惜しまれながら死んでゆく英雄に憧れる
使い回されてとっくの昔に錆びついた
安っぽいヒロイズムが大好きで
磨り減ったラバーソールで歩き回る
機嫌悪いときにメールをすりゃあ
「私がメール嫌いなの知っててやってる?」と言われて
嬉しそうに携帯のメールを眺めていた顔を思い出して
苦虫を噛み潰したような顔をして
煙草を吸い込んで投げ捨てる
ラバーソールで踏んで消す
引き返して拾った吸殻はぺしゃんこで
それはもう見事にぺしゃんこで
うずくまって泣いてしまった
常識が無いと罵られ
使えないと嘲笑されて
メイド服を褒めればキモいと言われ
歩くのが早いと袖を引っ張られ
寒い
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