ふしあな。/もののあはれ
 
化そうにも確実に棒になっていたので
にっちもさっちも動けなくなってしまった
でもあまりにも水が欲しくていじましく喉を大きく開いていたら
ついには喉から手が出てきてしまった
ビジュアル的にかなり気味の悪い出で立ちになってしまったが
道行く人々は僕をパフォーマーか何かと勘違いしているようで
コインをくれる人はいても別段声をかけられる事は無かった
自分で思っているほど廻りは自分の事を気にしていない事を知り
寂しさよりむしろ随分と気分は楽になっていた
僕は異形な姿でなんとか起き上がり
自分の前に遥か続いていくであろう長い道程を
自分の枠に見合う歩調で自分なりに進んでみる事にした
やっとありのままの自分になれたのだろうか
久しぶりに思い出したのだが
小さな頃から吹いているこの風は
いつでも優しさについて歌いながら
僕の背中を未来へそっと押し出してくれているのだった






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