鉄鋼所/九谷夏紀
 
鉄鋼所が身近になってから
鉄を人に喩えたりするようになって
鉄製の電車の壁に身をすり寄せる

鉄の粉塵は無色で町を覆う
自動車の鉄板に細かな鉄の屑が毎日積もって
こびりついてなかなか剥れず
傷をつけながらそれらを落とす
私の場合口の中がじゃりじゃりしてうがいをしても取れない
小さいものは気付かないうちに入り込んで積み重なって
ある日脅威となる
人との結び付きや習わしもこんな感じかもしれない

冬の鉄は限り無く冷たい
外気は凍えてぬくもりはどんどん奪われて
いくら触れていても鉄をあたためることが出来ないまま
指から五臓六腑へ
冷たさが染み入る
手を離した
生を保
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