テトラポットの上のロイド/虹村 凌
回り続けて乾燥しきった〆鯖を見つめながら
ロイドは生物が嫌いだった事を思い出す
チキンラーメンに入れる卵でさえ
トロトロしてるのが許せない
そんな女だった事を思い出す
不器用にカクリカクリと体を動かすロイドは
金色のマールボロを吸っていた
煙草の先から蜃気楼が
傍にいてくれりゃいいのに
それで全てが上手くいって
それで幸せになれる気がする
でも僕等はもう
どの夜にも戻れない
テトラポットの上に
愛されたいのにされない
愛してるのに気付かれない
「そんな男とは別れちまえよ」
と言えたら少しは状況が変わっていたのか
袖を引く手を握るくらいでなびく女で
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