ノスタルジア・メロウ/砂木
かぶとの木と呼ばれていた
通学路沿いの
道から少し滑り降りて入る草薮の中の
真ん中がくり抜いたようなくぼみのある木
樹液が蜜のようで 夏にもなると
かぶと虫や くわがた虫が自然と寄っている
朝っぱらから
ランドセルの重さも気にしないで
今日はいる 今日はいないと
のぞきこんで捜してた
かぶとの木に かぶと虫をみつけると
登下校も はしゃいで
世界の秘密を ひとつ知ったような気がした
近所の林檎の選果場の建物の隅に
小さな箱などが置かれてて
夏には稼動していないその場所で
なわとびやら鬼ごっこやら
[次のページ]
戻る 編 削 Point(13)