ゆうなぎ/葉流音
 
 
その日の空は
穏やかに
緩んだ夏の陽射しと
青麦の香りを
含んでいて
なぜだか
涙がとまらなかった
 
長く降り続いた雨は
いつの間にか去っていて
名残と言えば
傾いた照る照る坊主
蝉時雨が
追い立てるように
鳴いていたのかも
しれない
 
ゆるりゆるり
であるようで
一秒の狂いもなく
一日が過ぎるのは
時計という
かたちを作ったからだ
 
流れを捕えたつもり
けれどもしかしたら
いや、
確実に
捕えられたのは
わたしたち
 
そんな
どうしようもないことを
何度も繰り返し考えて
ようやっと
涙はおさまった
 
まだ
太陽はぼんやり
そこにある
静かな畦道を
ひとり
できるだけ
ゆっくり
ゆっくり
歩いた
 

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