君のことは忘れていないから/円谷一
 
を流したが不思議な胸の空洞が気持ちをふわふわさせ喪服の人々が人には見えなくなっていた
 君のお墓は蜜柑の段々畑のような場所に立てられた 風が強い場所で髪の毛がいつも棚引いた
 君は生前も天国にいる今でもラジオのDJになりたかったと言っていた 君の代わりにラジオ局に入社しDJになった そして天国でも聴けるように周波数を教えた
 ずっと複雑な思いだった あの時一緒に韓国へ行っていたら… 君はとても寂しかったのよ と電話で言った 涙を流しながらうんうん と答えた
 もうすぐその電話使えなくなっちゃうのよと聞かされた 周りの景色が崩れ去っていくような錯覚に襲われた でも絶望と失望を堪えて 最後のラジオを放送することにした
  …では最後にどうしても伝えたいことがある人にメッセージを送りたいと思います
  今までありがとう そして感謝の気持ちで一杯です
  君を失った悲しみから救ってくれたのは君です
  どうか天国でいつまでも幸せに暮らして下さい
  君のことはずっと忘れないから…さようなら
 携帯電話を握り締め 星降る夜の空に思いっ切り投げ飛ばした
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