血液から生え出す植物、青。/あおば
 
あって電波を反射したり通したりの波長選択性がある>

 空の中には空気や細かい埃が拡散していて可視光を波長選択的に散乱すると、物理で習ったので、植物と動物では細胞が光を選択する波長域が異なるのですと出任せに言ってみた。怖い顔が一瞬ゆるんで遠い目をしたので、それ以上は分かりませんと言って、後ろを見ないで歩き出す。先生から逃げたのでなく、目的地に向かって歩き出したのだと自分で自分に言い聞かせ、廊下を曲がって靴を履き替え、電車に乗って帰宅した。
 それ以来、生物は苦手となって、植物も動物も依然として進化の過程にあると思いながらもそれ以上考えることなく過ごしているが、期末試験も近づいたので、血液中に視覚細胞が生じて植物となり、その細胞内のミトコンドリアが空気中の酸素を取り込み散乱するので青く見えるのです、と、この次、切れた顔の先生に会ったら答えようと考えている。


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