蝉時雨 /服部 剛
 
( 世界は 
( 透けた瓶の内にある 

森の小道を裸足で走り 
汗をかいたラムネの器の底を手に 
真夏の空に傾ける 

( 星のころがる、音がする。  

蝉時雨(せみしぐれ)の降りそそぐ少年
つめたいものがのどをとおる  
少しうるんだ瞳の先
真綿の雲間に 
波打つ
陽炎(かげろう)の空  

( 世界は 
( 透けた瓶の内にある 




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